野良猫のTNR活動は、カワイイ!をテコに生命倫理を洗練させる営み

ペット文化について
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友人と協力の上、近所の野良猫4頭のTNR※を行いました。

TNRって何?という方への簡単な説明と、活動を通して考えたビジョンについての記事です。

 

※ TNR活動とは(trap, neuter, return)の頭文字であり、

野良猫を捕獲(trap)し、不妊手術(neuter,)を施し、元の場所に戻す(return)活動のこと。野良猫の繁殖を防ぎつつ、殺処分を回避する活動。

 

どうぶつ基金様のさくらねこチケット制度を初めて利用させて頂きました。

この仕組みを利用すれば手術費用は無料。

つまりワクチン等を除けば、エサ代や交通費などの実費のみでTNRが行える、という優れた制度です。(しかし寄付金や動物病院のご厚意で成り立つものですので、無駄遣いは厳禁)

 

 

野良猫のTNRとは何か?

TNR活動というのは、殺処分を回避して野良猫問題を解決する策として、愛猫家たちが考えた苦肉の策です。

 

猫は繁殖力が強く、エサさえあればあっという間に数が増え、糞などの害を市街に与えてしまいます。

かつては野良猫を片っ端から捕獲し、殺処分をしていた時代もあったようですが、それではあまりに忍びないし、近代国家として情けない。

そこでTNRです。

 

 

平成29年度の日本国内における猫の殺処分数は、およそ35,000頭です。(環境庁のデータより

 

平成20年度の194,000頭、平成25年度の100,000頭から大きく減ってはいるのですが、依然として高い数字です。

ちなみに日本におけるヒトの自殺者の数は、平成30年度でおよそ20,800人(警察庁のデータより)ですから「その1.5倍以上の被害者数」と言えば実感が湧きますでしょうか。

 

 

どうぶつ基金様が管轄した範囲だけでも、平成30年度には約3,000人のボランティアにより、約20,000頭の野良猫に不妊手術が施されたようです。

他の助成金制度を使ったケース、助成金を用いないケースもあるため、その実数はもっと多くなります。

 

長年の活動の結果、そう遠くない未来に猫の殺処分を0にできそうです。

先人達の努力には頭が下がります。

動物愛護精神が遅れていた日本を牽引してきたのは、彼ら彼女らの仕事の成果です。

 

TNR活動を始めた経緯

個人的なお話ですが、私は猫の飼育経験がありません。

にもかかわらず猫のTNRを始めたきっかけは、ある日公園で、突然猫に懐かれたためです。

 

 

その時私は葬儀の仕事をしており、仕事の企画を練るために公園で考え事をしていました。

そんなタイミングで、一匹の野良猫が突然スリスリしてきて、膝の上にのって食べ物をねだって来ました。

 

「死者のことばかりを考えてないで、今生きているものにも何かしろ!」

と言われているような直感がありました。

 

 

そんな経過からTNRを実行するに至ったわけですが・・・TNR活動は「人間の美しさと醜さ、両方が発露した営み」だと感じています。

野良猫の殺処分が0になれば終了ではなく、次なるステップに進むための活動だからです。

 

 

なぜなら、なぜ猫だけを愛する人が多いのか?いう問いへの答えが出ていないからです。

というか、それは本当に愛なのか?

それとも愛に至るための中間地点なのか?カワイイ犬猫だけ助ければ満足なのか?

 

との想いは、TNRを始めてからも頭から離れたことがありません。

特定の種ではなく、生物全般や生命倫理に関心がある私としては、それは長年の疑問でした。

 

 

その疑問を解消するために、世界をより深く知るために、猫の保護活動は最適に思えました。

この辺を個人的なテーマとして動くにあたり、途中経過をシェアさせて頂きます。

 

 

 

愛猫家=動物愛護家、とは限らないらしい

TNRや保護猫の譲渡活動を始めてから、多くの愛猫家と接する機会がありました。

 

猫好きはメンヘラが多い」というステレオタイプは、・・・残念ながら正しいと思います。

 

そう見なされても無理はない、と感じることはしばしばです。

一方でメンヘラと揶揄されがちな猫好きが備える、強烈な実行力に驚くことも多いです。

 

猫好きは理解され難いせいで、誤解されてしまうだけなのかもしれません。強みと弱みを分業した結果、男と女が理解し合えなくなったような、、、もどかしさがあります。

 

つまり動物愛護全般に関心を持つ人間と、猫だけが大好きな人間は似て非なるものであり、そのセグメントが重なる領域は、思いのほか狭い。要は適材適所なのでしょう。

 

猫好きの怖さ

猫好きは他の動物好きとは違い、猫だけを熱烈に愛する傾向があります。

その反面、自分の猫以外には目もくれなかったり、性格に難がある保護猫には、平然と「この子は無理」と言い放つことさえあります。

よく言われる母性の怖い部分のようで、正直なところ私は面食らいました。

 

猫好きの美しさ

しかし「この猫たちの面倒をみるぞ」と決意した時の熱量は、凄まじいものがあります。

 

一人で何十頭もの野良猫にTNRを施し、保護団体を組織するなど、愛情が行動力に昇華されたケースを多く拝見しました。結果として多くの猫や人間を救っています。

よく言われる母性の美しい部分のようで、畏敬の念を感じる点ではあります。

 

猫ファースト=カワイイファースト?

界隈でよく聞く、猫ファーストというコンセプト。

ここからはTNR活動の次のステップが推測できます。なぜなら猫は肉食獣で、肉を食べないと死んでしまう生物だからです。

つまり猫ファーストは、他生物の犠牲の上に成り立っているため、そこで完結することは不可能なのです。

 

つまり猫ファーストとは、他の動物を犠牲にすることに他なりません。

同情を引きやすい具体例は、競争馬です。死後はネコ缶の中身になると噂されている、あの馬です。

 

猫に比類するほど賢くカワイく、人間との付き合いも長い馬は、近年保護活動が活発化してきました。そのうち「馬ファースト」なんて言葉が使われだすかもしれません。

そんなとき、草食動物の馬に対して、肉食獣の猫は不利な立場に置かれることになります。

その上、同じくキャットフードの原料であるニワトリにすら、保護活動が存在する始末です。

 

 

・・・この辺りが次の課題となるはずです。

犬や猫がヒトの身内になったのは大きな成果だけれど、前述の矛盾に目をつむったままでは、あまりにお粗末になってしまうからです。ハッピーエンドにはならないからです。

カワイイ猫を皮切りに、諸問題が考え直されることを祈ります。

 

カラスが人に懐いたら?猫だけを守る限界

捨てられた子猫などを食べてしまうケースがあるためか、仔猫を襲うカラスがよく悪者にされています。

しかし、もしカラスが可愛くなってしまったら?

 

 

黒猫が不吉というのと同じくらい、カラスが可愛くないというのも偏見です。猫がスズメを食べて生きているように、カラスは仔猫を食べて生きているだけなのですから。

同じく猫を襲うキツネにしたって、ペットにできることがほぼ証明されています

 

愛猫家たちは、それらの事実に目を向けようとしない人が大半です。

カワイイ猫を皮切りに、諸問題が考え直されることを祈ります。

 

犬猫の問題が解決したら、その先へ進めるように

TNRをしていると、ヒトという種の進化に感動を覚えます。

過去数万年にわたり、ただ他の動物を利用し、搾取するしか能がなかったヒトは、少しずつその過去を乗り越えようとしています。科学が発達し、ペット文化が生まれ、動物との付き合い方を再考できるように進化しました。

 

ヒトは万物の霊長を名乗りたいなら、動物たちを支配して殺すのではなく、力を与えて自由にさせる必要があるはずです。いわばノブレス・オブリージュ。

そして、そこに気づかせてくれたのは、他ならぬ動物たちですす。

 

 

個人的な反省としても、子供の頃はただ感情的に、自分のペットを愛でていただけでした。

大人になってようやく、様々な生物のつながりが見えるようになってきた今、微力ながらできることはしていきたい。

 

TNRを社会を変える発端とするために、カワイイ猫には切り込み隊長になってもらいましょう。他の動物に率先して、ヒトに取り入った成果として。

というか、自然とその役割に収まっているようです。

有名税ならぬ、カワイイ税として。

 

 

 

TCR活動(trap, click, return)中です。

 

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