チャントに学ぶ「サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にする」の真相

サッカー界にはこんな格言があります。

「サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にする。」

デッドマール・クラマーという指導者の言葉です。日本サッカーの黎明期に活躍したことで知られ、その後のサッカー界をけん引する人材を多く輩出しています。

しかし率直に申し上げると、クラマー氏の真意を理解するのは難しいです。

おそらくサッカーに携わる人間としての実感ではなく、「サッカーはこうあるべきだ」というスローガンとしての言葉だと思われます。なぜなら、現実にはサッカー界は素行の悪さが目立つから。個人としても集団としても、まだまだ少年だと言わざるを得ないから。

当記事では各国のサッカー文化を比較して、その実例をご紹介します。

サッカーは本当に紳士的なスポーツなのか?

それはお国柄によって様々です。

なぜなら、文化ごとに理想とする紳士像がバラバラだからです。

南米諸国の場合

南米にはマリーシアという「ずる賢さ」、「したたかさ」と訳される言葉があり、サッカー選手に不可欠な要素として認識されています。

その結晶がネイマールチャレンジを始めとしたシュミレーション行為であり、日大アメフト部さながらの削り文化(反則スレスレのタックルで相手を痛めつける行為をケズリと呼ぶ)というワケです。

これが紳士的かどうかはともかく、勝負の世界では避けて通れない側面ではあります。そんなハングリー精神を身に着けるという意味で、「サッカーは少年を大人にし、大人を紳士にする。」は的を得ています。

事実、南米からは優秀な選手が輩出され続けています。欧州と比べ育成環境が整っていないにもかかわらずです。

「とにかく勝負に勝つこと!」が南米サッカー界における紳士像と言えます。

日本の場合

日本のサッカー文化は比較的実直です。武士道を文化的背景に持つせいかもしれません。南米の選手のように、大げさなシュミレーション行為をする選手はごく一部です。欧州にはよくある乱闘や暴行などの事件も、滅多なことでは起こりません。しまいには「真面目すぎて損をしている!」と外国人指導者に苦言を呈されている程です。

2018年のロシアW杯でも、選手たちの振る舞いは(日本人の視点では)模範的でした。競技の質だけではなく、メディアを通してのコメントもカッコよかった、と個人的には思います。

しかもロシアW杯で日本が決勝トーナメントに進めたのは、「フェアプレーポイント」という採点システムの賜物でした。そう、紳士は勝つのです。

イギリスの場合

ではサッカー発祥の地ではどうなのでしょうか?

経済的にも文化的にも、誰もが認める先進国である、紳士の国イギリス。

さぞ高貴なサッカー文化が受け継がれているのでしょう。

・・・と思ったら違いました。

この動画は韓国のパク・チソン選手へのチャントで、2010年頃に歌われていたものです。

Paaark, Park.

Wherever you may be.

You eat dogs in your home country.

Could be worse, you could be Scouse.

Eating rats in your council house!

「パーーク!パク!君がどこに居ようと君の故郷では犬を食べる。それでもボロい公営住宅でネズミを喰ってるリバプール(ライバルチーム)の田舎モンよりはマシだがな!」

・・コイツら全く紳士じゃねぇ。

なおパク・チソンは欧州リーグで最も成功したアジア人選手の一人です。本田圭佑や中田英寿よりも格上。そんな彼が世界有数のクラブであるマンチェスターユナイテッドにて、大活躍していた頃のチャントです。

他にもあります。

ロシアW杯にて、何度も日本ゴールを脅かしたベルギー人FWのルカク選手(2018年現在マンU所属、黒人)に対しても、

「He’s our Belgian scoring genius with a 24-inch penis!」

「我らが天才ベルギー人FWはペニスも24インチだ!」

(黒人は巨根というステレオタイプがあり、ジーニアスとペニスで韻を踏んでいる。)

※動画は削除されました。ヘイトと判断された模様です。2019/7/15追記

更には

・出っ歯の選手に「お前の前歯はオフサイドなんだよ!」

・弱い地元チームに「せめてフリをしろ!点取って勝ったフリでもしてみろよ!」

・日本から来たFWが活躍できないと「腐ったスシは返品して金を返してもらえ!」

とか歌ったとか歌ってないとか。

Jリーグのチャントには、差別や嘲笑を含む歌詞など、絶対にありえません。

なんだ。

イギリスのサッカーファンなんて、所詮フーリガンばかりか。

みっともない文化だな。

・・と決めつけるのも早計です。

非紳士的なチャントが量産される背景

これらのチャントをよく聞いてみると、悪意というより憎めない可愛げを感じるようになります。

差別的な言葉や概念を使っているけれど、本気でバカにしてるわけではなくて、彼らなりの愛情表現を含んでいるからです。(もちろん冷徹な差別も消えないようですが、、。)

日本の愛犬家が「犬を食べるなんて信じられない!」とかヒステリックに騒いでるのとは話が違います。

イギリス人には何でも風刺したり皮肉ったりする気質があり、そうでないと退屈な性分であるようです。「皮肉は挨拶みたいなものだ」と知人のイギリス人も断言していました。

またイギリスは階級社会であり、サッカー観戦は低い階級のストレス発散を担っているそうです。不満のはけ口として、皮肉を言える場を提供している側面もあるのだとか。

要するにそういう文化なのです。他の国とは違う方向に進化したってだけ。

紳士や淑女というのは洗練された大人を指す言葉です。しかし、「洗練」には決まった形がなく、様々な分野の価値観を跨ぐものです。だから誤解を生みやすい。

よって洗練とは何か?という問いへの答えとして、

「矛盾や社会問題を堂々とネタにできる」

というのも一つの答えではないでしょうか。例えばホーキング青山さんのように。優等生的な態度を求めるだけでは視野が狭いし、何よりも人の心を揺さぶりません。

本物の紳士は、多様な価値観を受け入れる

ところで、下品なチャントの先進国であるイギリスは、世界有数の動物愛護先進国という横顔を持っています。

日本のサッカー観戦は安全で、女性一人で試合観戦に行っても平気です。試合後のゴミ拾い文化も素晴らしい。しかし動物愛護関連では、イギリスに50年は遅れていると言う人もいます。

では日本とイギリス、どちらがより洗練された社会なのか?

そんなのはナンセンスです。

価値観が多様である以上、清濁併せ呑むいい加減さだって美徳です。本当の紳士淑女たるためには柔軟性も大切です。

下品なチャントは少年をフーリガンに変えるけど、愚かさをユーモアに昇華しています。イギリス人が動物愛護問題に対処が早かったのも、厄介ごとをタブー視して隠さない国民性が、良い方面に作用した結果なのかもしれません。

真の紳士や淑女やLGBTとは何なのか?私たちは様々な視点で考える必要があります。

最後はクラマー氏をモチーフに、当サイトに関する格言で締めくくります。

「肉食はサルをヒトにし、ヒトを文明人にした。」

「肉食とペット文化の共存はヒトを混乱させたが、いずれはヒトを紳士淑女へと導くだろう。」

紳士淑女たるもの、、ね?

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