病院の手術室を清掃するアルバイトの経験があります。
清掃するのは血まみれの床や手術道具、飛び散った患者さんの骨なんかです。
前記事→ 2019/1/27【病院の手術室を清掃するバイトの体験談①】血と骨に学ぶ掃除道の真髄
人間の血を拭くなんて怖い?スプラッタな底辺労働だ?
この仕事をググるとそんな悪評が散見されるため、経験者として反論します。
むしろ悪いイメージの前フリに感謝したい位です。もう着地点が見えたようなものですから。
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献体はキモチワルイ?
まず医療関係者は、血や人体を汚いとも卑しいとも思っていません。たとえバイトの清掃業者であっても、自然とその感覚は共有されます。(医療的な清潔/不潔、感染源の話は別。)
わかりやすい例は献体でしょうか。
献体とは、
「医学系大学に遺体を無条件・無報酬で提供し、解剖実習の教材にしてもらう行為」です。
医師や歯科医の養成を支える、大切なドネーションです。
医師だって最初は素人ですから、「はじめてのかいぼう」はきっと緊張したことでしょう。初めての解剖実習を終えた、医学生たちの声を聞いてみましょう。
「獨協医科大学 献体事務室獨協白菊会様のHP」より引用
このように献体は敬われます。
従って、手術で散乱する血や人体組織を汚いと思うワケもなく、それを清掃する仕事が卑しいということにもなりません。
とはいえ素人が敬遠してしまうのは仕方ありません。こういうことを学ぶチャンスがなかったのだから。言い換えれば、学習する機会さえ作れば、変な先入観に捕らわれる人はゼロになります。
これを学べるだけでも、それなりの価値があると言えます。
食肉はキモチワルイ?
話を変えます。実は献体なんて珍しくもなんともありません。
さっきの文章を改変します。
そう。
この誤解を解くために、わざわざヒトの解剖実習をやる必要なんてなかったんです。既に毎日のように(間接的にではあるが)解剖を実行していたから。無意識とは恐ろしいものです。
別の意味で恐ろしいのは、医療関係者は案外この話に興味がないことです。
彼等の関心は、ヒトを対象とした医学的な知識や技術にあり、食物や実験材料としての他生物へに関しては、全く興味がなかったりします。それこそ一般人とほぼ同じ。
そりゃ仕事が忙しいし、科学が煙たがる話だから仕方ないんですけど・・
解剖実習で得た知見は、ヒトに限った話ではないのは明白です。
それでも、もし普段食べている動物に一切敬意を感じてないとしたら、ヒトの献体へ送られた敬意すら、安っぽく見えてしまいます。
?
これ嘘だったの?ホントに学習したの?
なんてね。
だから個人的には少し違和感があります。獣医とかだと違うのかもしれませんが。
ほとんどの認識は錯覚
手術室の清掃をしばらく続けると、扱う物体への苦手意識が徐々に消えていきます。
血だろうが、肉だろうが、骨だろうが、切り離された手足(ごく稀に扱います)だろうが、怖いと感じるのは錯覚だと思い知らされるからです。
逆に言うと、人間の献体を必要以上に敬うのも滑稽なんです。
どちらもイメージに過ぎないからです。状況次第で感じ方がコロコロ変わるからです。
ただ一つ言えるのは、どんな生物の身体もいずれ土に還ること。自然界を絶えず循環していること。本質的にはキレイとか汚いの観念とは無関係であること。
それらを身をもって体得できれば、一生の財産を得ることになります。
時給の安さなんて気にならなくなる位のね。
これもドネーション
→ 【病院の手術室を清掃するバイトの体験談③】年間17万件の中絶の本質
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