【体験談】ヒザの前十字靭帯断裂からサッカーに復帰するまでの全行程

サッカーの話
この記事は約19分で読めます。

17歳の頃、サッカーでヒザの前十字靭帯を断裂しました。

 

全治7~8ヶ月の大ケガであり、長いリハビリ期間中はとても不安だった記憶があります。

誰かの役に立つことを願い、詳細な体験記を残そうと思います。

 

 

もしあなたが同じケガをした直後で、不安に駆られながら記事を見ているとしたら、まずはご安心下さい。

不安になって当然です。安心して悩んで下さい。

 

 

前十字靭帯断裂は治るケガです。

そして苦しい治療生活も、いつかいい思い出になる日がきます。

 

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前十字靭帯断裂ってどんなケガ?

まず前十字靭帯断裂とはどんなケガなのか?

詳細は医療機関のサイトをご覧いただくとして、基礎知識をかんたんにお伝えします。

 

 

前十字靭帯(ゼンジュウジジンタイ)とは、上下に噛み合った膝骨を固定する靭帯です。

ヒザの骨の中心部を十字に(クロスして)貫く太い靭帯です。

クロスした前側にある靭帯だから、”前十字”靭帯と呼ぶそうです。

 

この靭帯は膝の可動域を制限するストッパーなので、切れたり損傷したりすると膝を動かす際に激痛が走るようになります。

俗に”ヒザがゆるい”と呼ばれる状態になってしまうのです。

 

 

余談ですが、チキンレッグを食べる際に膝関節の筋をよく観察すると、靭帯と骨の仕組みをおいしく学べます。

靭帯が膝の中を通っている様子は、けっこう人間と似ているので。

 

 

スポーツの世界ではよくあるケガで、サッカーやスキーなど、膝への負担や衝撃を伴う種目でよく発生します。

 

有名な例はサッカーのロナウドでしょうか。

彼は復帰戦でもう一度同じケガ(厳密には更に酷いケガ)をしてしまう悲劇に遭い、かつそれを乗り越えて活躍した選手です。患者たちを勇気づけてくれますね。

 

 

但しこのケガは、必ずしも手術が必要なワケではありません。

日常生活を送るだけであれば、靭帯は一本切れたくらいなら支障がないからです。

 

しかし私の主治医によれば、手術をしないケースは

1.手術&リハビリの負担が重い高齢者で、もうスポーツをする予定がない

2.体質や筋力の関係から、手術をしなくても激しいスポーツをこなせる特異体質を持つ上、手術による休養期間を設けたくない

 

というごく一部の例外に限られるそうです。

「2.」の割合1%未満であり、よほどの事情がなければ手術で治すのが原則です。

 

元サッカー日本代表の城彰二氏「2.」にあたるのですが。

海外移籍の際に靭帯を治していないことを問題視され、契約に悪影響がでたという話も聞きます。

(真偽はわかりませんが、ありえる話だと思います)

 

怪我はサッカーの試合にて

 

怪我をした状況はサッカーの試合中でした。

 

相手を追いかけてスライディングをした瞬間に、普通ではない痛みが膝を走り、まともに走れなくなりました。そのままびっこを引いて交代しました。

全速力で走って足を踏み出し、並走していた選手と衝突したことが原因と思われます。

 

但し、衝突はケガの絶対要因ではありません。場合によっては、全力で踏み込んだだけとか、ジャンプして着地しただけでも発症することがあります。

 

なお前十字靭帯が断裂した瞬間には、「ブチッッッ!!」とすごい音が周囲の人にまで聞こえる場合もあるのだとか。なお私の場合は、全く聞こえませんでした。

音がなってたら、ちょっとドラマティックだったのにクソ。

 

初診では捻挫と診断される

その日のうちに整形外科にかかったところ、「膝の捻挫」と診断されました。

大したことはないから、「練習や試合への参加を、医師として止めることはないよ」との診察結果です。

 

それでも痛くて運動ができないため、1週間ほど休養を取ってから練習を再開したところ、依然としてメチャクチャ痛いのです。

全力で走れるのですが、曲がる(ターンする)ことができない。

つまりヒザをひねる動きをすると、立っていられない程の痛みがありました。

 

改めて病院へ行くと、関節のひっぱり検査とMRIを経て、ようやく「前十字靭帯断裂」と言い渡されました。

 

 

がしかし、最初の診断が誤診だったワケではないようです。

理由2つあります。

 

1.初期の前十字靭帯断裂は、捻挫と誤認しやすい(医学的な一般論)

2.本当に捻挫だったかもしれない。

 

つまり、捻挫と診断されたので、その後もスポーツをしてしまいました。

最初は捻挫や靭帯の損傷で済んでいたのに、その後の負荷で断裂に追いやってしまった可能性があります。

 

 

これもたまにあるケースだそうです。

ぜひ気をつけてほしいのは、不自然な痛みを感じた場合は、ただちに運動をやめて病院へ行くこと!の徹底です。

 

特にヒザは故障リスクの高い箇所です。

手術なしでは治らない大きな靭帯や、ほとんど治癒能力のない半月板のケガは、選手生命をも左右します。

酷い場合は、日常生活に支障をきたすケースすらあります。

 

だというのに、初期診断では捻挫と言われる可能性があります。

「医師に捻挫と言われたのだから大丈夫だ!」と自分に言い聞かせてはいけません。

しっかり自分の感覚で、状態を見極めて下さい。

 

 

治療開始

 

二回目の診断の後、すぐに入院して手術を受けました。

入院期間は2週間ほどです。その後もリハビリを続け、運動を開始できるのは3~4ヶ月後、本格的にスポーツができる状態になるまでは、早くて7ヶ月です。

 

これはプロ・アマ問わず、おおよそ共通した回復期間です。

プロの場合だと、感覚が戻るまでに更に時間を要することもあります。

 

なお、筆者が手術を受けたのは2004年ですので、今は技術が進歩して状況が変わっているかもしれません。

 

 

手術の概要

 

前十字靭帯断裂を治す手術というのは、切れてしまった靭帯の場所に新しい靭帯を植え付ける手術です。

 

1.ヒザの真ん中にドリルを穴を開けて

2.そこに新しい靭帯を通し

3.靭帯の両端をボルトで固定する

といった流れだそうです。

 

もし半月板にも損傷があれば、更に工程が増えていたのだとか。

筆者の場合、半月板はノーダメージだったのはラッキーでした。

 

 

新しい靭帯というのは、膝の裏側など、別の場所から取っても支障のない靭帯を切り出したものです。

つまり本人による生体移植です。

靭帯の強度としては、「元の8割程度だと思っておくように」と医師より聞きました。

 

そして、この際に植え付けたボルトは、もう一度手術して取り除く必要があります。

抜釘手術(ばってい)ってやつですね。

はぁぁ・・メンドクサ。

 

 

手術は脊椎麻酔で行う予定でしたが、私は麻酔の効きが悪かったのか?途中で全身麻酔に切り替えられました。

おかげで手術シーンが記憶に残らず、貴重な経験を逃してしまいました。

 

 

 

・・手術が終わって目を覚ますと、全身がとにかく不快です。

 

外科手術はなんでもそうなのでしょうが、

熱がでるわ、おしっこの管がアソコに刺さってるわ、腕には点滴が、指には血圧か何かを計る器具がついてるわ、両足には血栓予防のマッサージマシンが付いてるわ、患部には太いチューブがぶっ刺さってるわ、痛くてまともに眠れないわ、

 

・・・とにかく初日が一番キツイです。

 

たまに痛みを我慢したほうが治りが早いと信じているドMの方がいらっしゃるそうですが、とっとと痛み止めを使ってもらいましょう。

そんなのは迷信、あるいは高度なSMです。

まぁ痛み止めだって焼け石に水なんですけど。

 

手術後は即リハビリ。まずはCPMの拷問

 

手術の翌日から、早速リハビリが始まります。

やっとおしっこの管や不快なマシン達が外れたと思ったら、次は「ヒザ曲げ伸ばしマシン」であるCPM(シーピーエム)の出番です。

 

こんなのです。

 

CPM(Continuous Passive Motion)

持続的他動運動装置。ヒザなどの関節可動域の改善に対して、無理なく回復訓練を促進させる器械。

関節ライフ様HPより引用

 

この動画の通り、痛いんですよマジで!

関節技を小刻みに食らってるような感覚です。

 

それでもCPMを使わなければいけない理由は、

関節は少しでも放置すると、カチカチに固まってしまうからです。

従って、術後の歩けない期間中にも、ストレッチをしなければいけません。

 

 

当然ヒザの組織はまだ傷ついたままです。だから曲げ伸ばしだけでも痛いです。

でも痛いくらいにやらないと意味がありません。ストレッチなので。

 

CPMには角度計がついていて、初日は30°、次は40°と徐々に膝を曲げる角度を深めていきます。

つまり、初日は30°くらいしかヒザが曲がらない状態にまで、コンディションは悪化するということです。

 

実際に目にすると結構ショッキングです。

でも安心しましょう、ちゃんと元に戻ります。

あとやっぱり痛いです。でもがんばって!

 

 

あと術後の足は、たった2日ほど動かしていないだけなのに、信じられないほど細くなります。自由に動かせる反対の足を比べると、

 

「これが私の足・・?まるで棒じゃん」

と感じることでしょう。

 

でも安心しましょう。

クドいようですが、ちゃんと元に戻りますから!

 

 

さて、CPMが120°位まで進んだ頃だったかな?(うる覚えで)ようやく車椅子を卒業し、歩く訓練が始まります。

ここまでが術後7日くらいだったと思います。

 

歩行訓練を始め、車椅子を乗り捨てる

 

ヒザが曲がるようになれば、歩行訓練を開始します。

車椅子でトイレにいくのにも慣れてきた頃、今度は平行棒で歩く訓練が始まります。

 

まさにこれです。

 

おそるおそる患部に体重をかけてはもとに戻す、の繰り返しです。

歩くのってこんなに難しかったのか、、!?と妙な感覚になります。

 

なお歩行訓練を始める頃には、ヒザにゴツいサポーターをつけることになります。

私はこんなやつをオーダーメイドで作ってもらいました。まだ治りきっていない靭帯の代わりに、膝関節を安定させる装具です。

 

ちなみに、これを付けて高校へ通っていた頃のあだ名は「ロックマン」でした。

 

 

歩行訓練は比較的スムーズに進みました。

年齢的にも回復は早く、訓練開始後の3日程度で歩けるようになりました。

両手を棒から離して歩けたとき、我が子がはじめて歩いた時のような感動に包まれたのを覚えています。もう車椅子なんていらないぜ!

 

と言っても、まだ少ししか歩けないので車椅子を使うんですけどね。

その後3日くらいして、歩ける距離が伸びてきた頃に車椅子ともお別れ、そして退院となります。

 

退院後は少しずつ運動強度を上げる

退院しても、しばらくは移動が大変です。

 

通学するのにも息切れするし、足はまだまだ不自然な細さのまま。

このあたりは徐々に回復しますので、焦ってはダメです。定期的に医師の経過観察があり、関節や筋力の回復具合を見てもらうことなります。

 

3ヶ月もすれば、速歩きや小走りをすることに恐怖心が消えてきます。早ければ、このあたりでジョギングを始める許可がおりると思います。

しかし油断は禁物。焦らずにゆっくり運動強度を上げていきましょう。

 

 

なお転倒や衝突には十分注意して下さい。まだヒザの組織は回復の途中です。

筆者は10月に手術をしたため、リハビリ期間はちょうど真冬でした。

雪が踏み固められた道を通らざる負えず、何度か転んで膝をひねり、また靭帯が切れたァァ!と絶望するほどの痛みを味わったことがあります。

 

あと、ふざけてヒザカックンをしてくる人種にもご注意ください。

 

スポーツへの本格復帰

 

術後6ヶ月ほど経ち、左右の足の太さがほぼ釣り合ってきた頃に、少しずつスポーツに復帰してOKと医師に言われるはずです。

まずは簡単で負荷の少ない動作から、焦らず少しずつ。

 

そこで問題がなければ、医学的には完治と見なされるはずです。医師としてできることはもうないから、もし不安があればスポーツ外来の守備範囲だよ、と伝えられるかもしれません。

残る課題は、競技レベルの微細な感覚を取り戻すことと、再発への恐怖心を乗り越えることだけです。

 

術前とはやはり細かい感覚が違ってくるので、今までできていたことができなかったり、ここぞの場面で踏み込むのが怖くなっていたりします。

そのあたりの微妙な感覚が戻ってくれば、スポーツへの復帰はもうすぐそこです。

あとは本人が納得できればOKでしょう。

 

 

筆者の場合は、7ヶ月過ぎで無事に試合に戻ることができました。

実は後遺症が少しだけ残り、ヒザが完璧には曲がらない状態、つまりカカトとお尻をくっつけることができない症状が残りました。しかしスポーツに(おおよそ)支障は出ていません。

 

筆者は低レベルな競技者だったので復帰が叶いましたが、もしプロの選手であれば、もっと繊細な調整が求められるのでしょう。

言わずもがなとして、この回復過程はあくまで参考程度にとどめて下さい。

 

ヒザに埋められたボルトを抜く手術

その後、適当なタイミングで抜釘手術(ヒザに残ったボルトを取り除く手術)を受ける必要があります。

ボルトを抜くだけの簡単な手術です。

手術は脊椎麻酔で入院は4~5日。手術の翌日には普通に歩けます。痛みも全然なし。

 

 

従って何も心配はいりません。日程を調整するだけです。

 

しかし、、、100%安全な手術というのはありえません。

時には思わぬ落とし穴にはまることも。

→ 2021/1/6 脊椎麻酔をしたら脳脊髄液減少症を1日だけ味わったときの話

 

その後の経過も問題なし

 

術後10年以上経ち、ほぼ問題はありません。

・フルマラソンや筋トレが普通にこなせます。

・寒い季節に痛むこともありません。

・皮膚の神経も気づいたら再生※していました。

 

※メスを入れた箇所の皮膚は神経が切れてしまい、ずっと麻酔がかかったような感覚になります。しかし、医師より「何年もかけてゆっくり治る」と予告されていた通り、気づいたら元に戻っていました。

 

 

困るのはただ一点、相変わらずヒザが曲がりきらず、正座やストレッチができないことぐらいです。

 

まとめ

大怪我にもプラスの側面が必ずあります。

たとえ回復まで7ヶ月を要する大ケガで、競技者にとっては致命傷とすら呼べるケガだとしても、その経験を役立てることが出来るようになります。

 

 

あるいは、ケガや入院生活をきっかけに、医療の道を志す人も多いです。

筆者の場合では、生命倫理や哲学的な諸問題(感覚や意識のメカニズム)について考えるいい材料となりました。ついでにブログのネタにも。

 

この駄文が、いつか誰かの役に立ちますように。

 

 

 

 

 

なお当ブログのメインテーマは生命倫理です。

生物の生死や、それに準ずる倫理的な課題を論じており、動物を解体して食べる記事も多くあります。

そんな中で、たかが靭帯1本切れただけで大騒ぎしてるなんて、ニンゲンってやつは贅沢な生き物だなぁ。

 

と、おかしな気分になります。

 

 

ブチッとな

 

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